






アーティストとしての
活動20周年を迎えた清川あさみ。
この展覧会は、彼女のルーツとも言える
故郷・淡路島での初めての個展となります。
初期の作品から、
代表作である「美女採集」シリーズや
「TOKYOモンスター」、
そして最新の大型作品「あめつちのうた」、
アニメーション作品「くにうみ」を
含む約40点を展示します。

アニメーション作品「くにうみ」(2021)

わたしたちのおはなし
「日本書紀」(2020)

貝合わせ「やくも」(2018)
淡路島で生まれ、服飾を学ぶ為に1997年に上京しました。その頃の私にとって、東京は人やものや情報が集まるだけでなく、自分自身が表現者となる可能性に満ちた場所でした。上京した当日、原宿の路上でスカウトされ、始まった女性誌のモデルのお仕事もそのひとつでした。
モデルをしながら、他人から見た人の外面と内面の関係にその人の深層心理や社会状況がどのように影響するのか?ということに関心を持ちました。ファッション誌が扱う商業写真が「表」だとすると、「裏」に隠れたモデル自身の心の奥に興味が湧いたのです。
そして写真に刺繍をするという方法で、誰もが持っているコンプレックスなどをテーマにしたシリーズが「美女採集」、「Complex」、「TOKYOモンスター」などになります。
糸は日常の様々な場面に現れます。刺繍をすると、どんな所にでも物質感を伴ったイメージが現れます。そこには過去・現在・未来へと物語を繋ぐ力があると信じています。
世界中でCOVID-19が猛威を振るい、先の見えない不安が人々の間に広がるなか、希望の光を実感したのは、自分が生まれた場所に戻り、太古から変わらぬ海や朝日の美しさを目にした時でした。
国生み神話で知られるイザナギとイザナミは高天原の神々に命じられ、日本の島々を創成したと言われます。そのはじまりの島としても語られる故郷、淡路島から臨む海とそこに浮かび上がる朝日をモチーフに作品をつくりたいと思いました。
人間と自然との新たな関わり方が求められている現在、自分たちが自然の一部であることを知ると共に、生命の美しさを讃える「あめつちのうた」がうまれました。
この作品が、これからの私たちの新しい物語を紡いでくれることを願って。
清川あさみ
清川あさみ / アーティスト
1979年、兵庫県・淡路島生まれ。東京を拠点に活動。
服飾を学ぶと共に雑誌の読者モデルをしていた2000年代より“ファッションと自己表現の可能性”をテーマに創作活動を行う。雑誌やSNSなど、人々が日々関わる情報メディアやシステムが拡張する社会で、個人のアイデンティティを形成する“内面”と“外面”の関係やそこに生じる心理的な矛盾やギャップなどを主題とする。
偶然「糸」が写真の上に重ねて置かれたのを見たことから着想し、モデルとなる人物を撮影して、その写真に直接刺繍するという独自の手法をはじめる。「糸」と写真のほかに、雑誌や本、布やキャンバスなど、ミクストメディアによる多様なビジュアル表現を展開する。
代表作として「美女採集」 「Complex」「TOKYOモンスター」などがあり、人がそれぞれ持つ人生のストーリーや、心の状態と社会状況の関係を作品化し、国内外の美術館で展覧会を多数開催。また広告・空間・映像・舞台のアート&クリエイティブディレクターとしても活躍する他、絵本作家としても活動を続け、谷川俊太郎氏と共作の絵本『かみさまは いるいない?』は児童書の世界大会の日本代表に選出。故郷・淡路島の活性化にも積極的に携わる。
